1章:トピックは何にしよう?

 

 

 レポート、論文を書くためには、まず、トピックを決めなくてはいけません。あらかじめ課題が決まっている場合もありますが、その課題の中でも、自分がどの部分に焦点を当てて書くかを、決めなくてはいけません。そのトピックの決め方を、第1章で、2つ、ブレーンストーミングと文献検索を提案します。

 

(1)  ブレーンストーミング

(2)  文献検索

 

 

(1)ブレーンストーミング

 

ブレーンストーミングとは、自分のアイディアを整理するための一つの方法です。「自分は何に興味があるのだろう?」、「どんなアイディアを持っているのだろう?」、ということを、ブレーンストーミングをすることによって、自分で見つけ出していきます。つまり、自分の中を自分で探検するわけです。

 

 方法は簡単です。これから順に説明しましょう。

 

ステップ1:テーマを決める。

 

 あらかじめ決められたテーマがあれば、そのテーマになります。また、自分でテーマも決めなければいけないとすれば、とにかくおおまかでいいのでテーマを選びます。

 

 例えば、授業中に「『私の日本語再発見』という題名でレポートを書きなさい」という課題がでているなら、「私の日本語再発見」がテーマになります。また、卒業論文や研究レポートなど、どんなテーマを選んでも良い場合は、漠然とでもいいので、自分が「こんなことをやりたいな」と思っていることをテーマにします。例えば、「日本の政治」、「サッカーと日本」、「日本と自分の文化比較」、といったように、大きなテーマで良いのです。

 

ステップ2:アイディアを書き出す。

 

 自分が決めたテーマに従って、どんどんアイディアを書いていきます。頭の中で考えているだけではいけません。書き出してください。もうこれ以上アイディアが出ない、と思うまで書いていってください。

 書き出すときの注意点があります。

 

ポイント1.書いたものは消さない。

思いついて書いたものは消さないでどんどん書いていってください。消すなら後でゆっくり消せます。

ポイント2.できるだけ短い文章で書く。

長い文章で説明する必要はありません。短い文章、単語一つだけで自分のアイディアをどんどん書き出していきます。例えば、「日本の政治」という

テーマについてアイディアを書き出すなら、「国会」、「賄賂」、「改革」、といった具合です。

ポイント3.きれいに書こうと思わないで。

他の誰かに書いたものを見せるわけではありません。自分のためのメモです。後で自分が読めれば、きたない字であちらこちらに書いたって大丈夫!

 

ステップ3:グループ分けをする。

 

 もう書き出せなくなるまで書き出したら、今度はその書き出したものを見ながらグループ分けをしていきます。書き出したアイディアの中には、似たようなものがいくつかあるはずです。それらを同じところに書き並べていきます。このグループ分けをしている間に、なにか新しいアイディアが浮かんだら、それも加えていきましょう。

 

ステップ4:グループ分けしたものを眺める。

 

 グループ分けが終わったら、最後の作業です。ひたすら自分のアイディアを整理したものを眺めましょう。眺めているうちに、自分が一番興味をもっていることが見えてくるはずです。

 眺めるときのポイントは3つ。

 

ポイント1.どのグループに自分のアイディアがたくさん集中しているだろう?

ポイント2.ブレーンストーミングしたものを眺めているうちに、新しいアイディアがわいてくるのは、どのグループに関することだろう?

ポイント3.書き出したアイディアの中に、特に自分がひかれる、興味を覚えるアイディアはあるだろうか?

 

以上のポイントの答えを探しながら、書き出したアイディアを眺めましょう。

 

ステップ5:トピックを決める。

 

 さあ、ステップ4のポイントの答えが自分で見つかったら、それがすなわちこれから書こうとするトピックになっていきます。

 

 「そんなこと言ったって、一、二、三の答えが全部違うんだけど・・・」という人、このブレーンストーミングという作業では、そこまでで、良いのです。少なくとも、今、自分が興味のあるトピックを三つにまで絞れ込めたのだから。

 

 さて、説明を読んでいるだけでは、実感がわかないでしょう。というわけで、例題と練習問題を使って、実際にブレーンストーミングをやってみましょう。

 

 【例題】

 

 【練習問題】

 

 

 ブレーンストーミングの方法は身につきましたか?それでは、論文・レポート作成のためのトピックを決められた人も絞れ込めた人も、次の作業に移りましょう!

次は、文献検索による、トピックの絞込み、アイディアの絞込みです!

 

 

(2)文献検索

 

 トピックを決めるためにOWLが提案する二つめの方法は、文献検索です。

 

 なぜ文献検索がトピックを決めるために有効なのでしょうか。それは、他の人のアイディアによって自分を刺激することができるからです。さらに、自分が研究しようと思っていることは、すでに他の人によって研究されているかもしれません。とすれば、自分のどのアイディアが他の人と同じで、どの部分が自分独自の新しいところなのかを、はっきりさせる必要があります。

 

 前のブレーンストーミングは、自分で自分を探索することによってアイディアを見つける方法でした。今度は、外から刺激をもらいましょう。

 

ステップ1:テーマを決める。

 

 これは、ブレーンストーミングのときと同じです。

 

ステップ2:文献を検索する。

 

@   論文・本の引用文献、参考文献から検索する。

学術論文、本には、必ず引用文献、参考文献が記載されています。この引用、参考文献を調べます。まず、自分がこれまでに読んだ文献の中で、特に興味を持ったもの、自分が考えているトピックについて書かれている論文・本を選びます。その論文・本の本文で引用されている論文や本は、要チェックです。また、先行研究として紹介されている文献もチェックしておきましょう。さらに、引用、参考文献を見て、興味を惹かれるタイトルや、ここ2,3年の内に書かれた論文・本も調べましょう。

 

ここでチェックした論文・本を手に入れるには、図書館で検索するか、オンラインで検索する必要があります。

 

A   図書館で検索する。

 図書館で文献を検索する方法としては、2つあります。1つは、あらかじめ具体的なタイトルがわかっている論文や本が、図書館にあるかどうかを検索する方法です。もう1つは、トピックに含まれるキーワードをもとに、文献をあらく検索する方法です。例えば、自分が決めたトピックが「読み手を説得するレポート・論文の書き方」だとしましょう。ここでキーワードになるのが、「読み手」、「説得」、「レポート・論文の書き方」です。これらのキーワードを順に検索していきます。

 

検索には、図書館のOPACCD-ROM、インターネットのデータベースを使います。一昔前は、図書目録カードがありましたが、今はどの図書館でもコンピューターを使ったOPACを導入しています。

 

 OPACは、その図書館、例えば今あなたが所属している大学の図書館が所蔵している図書、雑誌を調べることができます。言葉をかえて言うと、その図書館が所蔵していない図書、雑誌は検索結果には、出てきません。また雑誌論文のタイトルも調べることはできません。

 

 その図書館が所蔵していない図書を検索するためには、NACSIS Webcatという、オンラインの検索データベースを使います。このWebcatはインターネットに接続できる状況さえあれば、いつでも誰でも利用することができます。

 

また、雑誌掲載論文を調べるときは、図書館が持っているCD-ROMを利用することができます。CD-ROMには、例えば、「世界大百科」、「日本民族学文献目録」、「国家大観」などいろいろな種類があります。図書館によって所有しているCD-ROMが異なるので、利用する図書館のレファレンス・ディスクに尋ねてください。

 

他に、図書館によっては、契約データベースといって、その図書館内でしか使えないオンラインの雑誌記事検索データベースを利用できます。例えば、「MAGAZINEPLUS」や「雑誌記事検索」などがあります。

 

 図書館では、その図書館が所蔵していない本を他の図書館から取り寄せたり、雑誌論文の場合は、他の図書館からコピーを取り寄せるサービスをしています。また、自分で他大学の図書館を訪問して文献を入手したい場合は、紹介状を書いてくれます。文献検索、文献入手でわからないことがあったら、図書館のレファレンス係に聞くようにしましょう。

 

B   オンラインで検索する。

 自宅や大学などで、インターネットにアクセスできる環境があるなら、オンラインで文献検索をすることもできます。

 

 Aで紹介したNACSIS Webcat以外にも、オンラインの文献検索データベースはたくさんあります。大学関係者が独自につくっているデータベースや、学会がつくっているデータベースは、オンラインで利用することができます。

 

まず、主要な検索エンジン(例えばYahoohttp://www.yahoo.co.jp/Googlehttp://www.google.co.jp/、検索デスク:http://www.searchdesk.com/、など)で、「文献検索」というキーワードを打ち込んで自分が使えそうな文献検索データベースがないかを探す方法があります。また、自分の専門分野、例えば「社会学」、「政治学」、「医学」などを、キーワードとして打ち込んで、大学関係者のホームページを探すという方法もあります。利用できる文献検索データベースを見つけたら、あとは、Aの初めで述べたように、本、論文をタイトルやキーワードから探していきます。

 

ステップ3:文献に目を通す。

 

 ステップ1の文献検索で得た情報をもとに、文献をさがして読んでみます。この時点で文献を読む際に、ポイントがいくつかあります。

 

 @ 本の場合・・・

1) まず目次に目を通します。目次を見て、自分のトピックとずれているようなら、その本は読む必要はありません。

2) 自分のトピックと似たようなことが書かれていると思われる目次を見つけたら、特に興味をひかれる章、または自分のトピックにとって重要だと思われる章を、さらっと読んでみましょう。

3) 用語の解説がしてあったり、筆者の主張に対して自分が「これは賛成だ」または「これは反対だな」と思うようなことが書いてあったら、その本を借りましょう。

A 雑誌論文の場合・・・

1) 論文の一番初めの部分を少し読んでみましょう。自分のトピックとある程度一致しますか?自分のトピックとずれているようなら、次の論文を探しましょう。

2) 論文の初めの方を読んで、自分のトピックと似たようなことが述べられている論文を見つけたら、次に結論が書かれている部分を見つけて読んでみましょう。興味をひかれる結論ですか?自分にとって新しい発見を与えてくれたり、自分がやろうとしていたりすることが書いてあったりしますか?結論に対して、自分の意見が浮かんできますか?これらの問いにYesと答えられる論文は、すぐにコピーしましょう。

 

 レポート、論文の締め切りまでに、時間の余裕がある場合は、もう少し大胆にいろいろな文献を読むことをお薦めします。例えば、本の場合、目次を読んでいいな、と思う本は、とりあえず読んでみるのもいいでしょう。論文の場合、一つ興味をひかれる論文を見つけたら、その著者の論文を全部集めて読んでみることも、いいと思います。

 

ステップ4:「惹かれる」論文・本からアイディアを得る。

 

 本や論文を集めたら、そこからアイディアをもらいましょう。まず、最初の作業は、集めた本や論文のタイトルを眺めて見ます。何か共通点が見えてくるはずです。自分の興味はバラバラなようで、実は意外とまとまっていることがあります。似たようなタイトルが集まっていませんか?集めた本や論文が取り上げているトピックに共通点はありませんか?自分が集めた本や論文のトピックに共通点を見つけることができたら、そのトピックがあなたにとって、一番魅力的だと言えます。

 

(1)ブレーンストーミングで、まだトピックが1つに絞り込めていなかった人は、この段階で、自分が一番興味を持っているものに気づくことができます。もし、集めてきた論文の量がトピックごとに同じなら、ここでどれにするか決めることを薦めます。もし、締め切りまでに時間があるようなら、2つのトピックについて、じっくり文献を読むこともできます。しかし、1つのレポート、論文で取り上げることのできるトピックは1つですので、最終的にどちらのトピックにするか決めるようにしてください。

 

ステップ5:ステップ2、3、4を繰り返して、トピックを決める。

 

タイトルを眺めて、自分の一番興味がある事柄を見つけたら、もう一度ステップ1を繰り返します。しかし、今度はより具体的なキーワードを使えるはずです。また、集めた文献の引用文献や参考文献から、最近10年の文献を選んで検索することも必要です。決めたトピックについて、最近の研究でどこまで新しいことがわかっているのか、またどんな新しい説や課題が出ているのかを知ることによって、自分のアイディアを発展させることができるからです。

 

 

 文献検索を使ったトピックの決め方が理解できましたか?(1)ブレーンストーミングと同じように、例題と練習問題を載せますので、実際に練習してみてください。

 

【例題】

【練習問題】

 

 

 ブレーンストーミングと文献検索を使って、トピックを決めることはできたでしょうか。ブレーンストーミングだけ、文献検索だけで、トピックを決められる人もいるでしょう。ブレーンストーミングと文献検索を両方行って、トピックを決める人もいると思います。どちらにしても、トピック選びは慎重にやりましょう。「なんとなくこれかな?」とか、「授業中に例で出されていたからこれでいいや」と考えてトピックを決めると、書くときにアイディアが出てこず、苦しくなります。

 

また、一度トピックを決めたからといって、絶対に変更できないというわけでもありません。例えば、「日本の政治」かた「日本の医療」というように、テーマ自体を変えてしまうと、また一から作業をやり直さなくてはいけないので、大変です。でも、「日本の政治−政党の成り立ち:自民党の場合」というトピックから、「日本の政治−デモクラシーと政党の誕生」というトピックへ変更するのであれば、それほど大変ではありません。ブレーンストーミングを進めたり、文献検索をしていくうちに、自分の興味が違ってきた、資料が集めやすい、などの理由でトピックを変えたくなることがあるかもしれません。そのようなときは、思い切って変えてみることも必要なのです。

 

 さて、ブレーンストーミングと文献検索を使ったトピックの決め方について、OWL第1章で、説明しました。ブレーンストーミングは、自分の中にあるアイディアを探すことによってトピックを決める方法でした。文献検索は、自分の外にある本や論文から自分の興味を探し、アイディアを得てトピックを決める方法でした。下に、2つの方法について、簡単にまとめます。

 

 

ブレーンストーミング

文献検索

ステップ1

テーマを決める

ステップ2

アイディアを書き出す

文献を検索する

ステップ3

グループ分けをする

文献に目を通す

ステップ4

グループ分けしたものを眺める

「惹かれる」論文・本からアイディアを

得る。

ステップ5

トピックを決める

ステップ2,3,4を繰り返して、

トピックを決める。

 

 

 ブレーンストーミングと文献検索の使ったトピックの決め方は、これで理解できましたね?次のOWL第2章では、文献リスト・文献ノートの作り方を説明します。せっかく、集めて読んだ文献を、あとですぐに役に立つように整理しておきましょう。OWL第2章では、その整理方法について説明します。

 

 

 

 

OWL トップページに戻る

日本語学習支援サイト トップページに戻る

 

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送